今、話題のPLDDについて

2019.3.16 春の嵐の後の快晴の軽井沢、ゲレンデにはスキーヤーが、路肩には残雪が、でもしっかり春の足音が聴こえました。

PLDD、経皮的椎間板蒸散術の不幸な歴史について、皆さんにお話ししたいことがあります。

この技術は実はかなりの歴史ある術式なんですが、膨隆、突出し神経根や脊髄を刺激している椎間板内にレーザーファーバーを安全に挿入し、レーザーの熱で椎間板内部を溶かして空洞を作り、内部の圧力を減げ、そして椎間板を縮小させて治療するという手術法です。 この手術法について多くのサイトを検索して頂くと、今でも、効果が疑わしいとか、イカサマであるような批判的な記述を目にすることがある一方、奇跡の治療法であるような直接的、間接的PRと思われる内容の記述も散見されます。 

現在でも、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症によって生じる坐骨神経痛に対しての外科的な治療に限って言えば、比較的小さく切開し内視鏡を用いた手術法や大きな切開を伴う手術が中心になります。そのために、手術回避の目的で、次々と新しい内服薬が開発されましたし、神経ブロック(ペインクリニック)の注射で痛みを取り除くという技術の進歩も手助けになり、外科的処置が必要な患者数は着実に減少しています。そのように、出来るだけ身体にメス入れたくないと多くの患者が望み、そして、約15年以上前から、メスを使わずに切らずにレーザーの熱で治す、PLDD(経皮的椎間板蒸散術)という理想に近い手術法があるにもかかわらず、どうして広く周知されなかったのでしょうか? 当時、この術式を積極的に推し進める医師も存在しましたが、理論ばかりが先行し、実際の手術成績にばらつきが多かった。それの原因としては技術的修練や器具の性能のばらつきなどが考えられます。それ故に、安定的に良好な結果をもたらす事が要求される健康保険制度には組み込まれなかった為、自由診療となり、法外な価格設定が横行し、一部の富裕族だけの治療になってしまいました。その結果、整形外科の中ではマイナーな治療法となっています。 ところが、最近、タンパク分解酵素なる薬物を椎間板内に注入し、椎間板内部を融解して減圧し、膨隆する椎間板を縮小させるという新しい治療法が承認されました。しかし、それは、まさしく15年以上前からずっと提唱されながら陽の目を見なかったPLDDの理論と同じだったのです。

私も15年前からPLDDを行っていますが、出てる椎間板の形や神経との位置関係などをしっかり吟味して、適切に施せば、ほぼ完治にまでいたらせる事が出来る素晴しい治療法です。色々な意見に耳を傾けながらも、しっかりと主治医と相談し、皆さんには御自分にとって最良の治療法と巡り合われることを心から願っています。

医療法人深緑会 田邊整形外科医院 理事長 田邊隆敏

この治療のご予約、お問い合わせは当院まで 072-988-5557

SCSは蜘蛛の糸か

別府、鉄輪温泉に友人達と出掛けて来ました。所謂、湯治というものです。自炊しながら長期に滞在し病を癒すわけです。 かつて不治の病といわれたリウマチ、神経痛をはじめ、末期癌など病院から有効な治療手段がないと宣告された患者達の最後の頼みの綱とも言えるかもしれませんね。隣りの女性は同行した友人です。 

マルチプルオペレーションバックって御存知ですか?

高度の変形やすべりによるズレなどを伴う脊柱管狭窄症は徐々に下肢機能を奪い、時に強い痛みを伴いながら歩行困難な状態に進行します。 症例ごとに手術内容は異なりますが、内服や神経ブロック注射などで回復しない場合は、多くの椎体の切除や固定を要する大きな手術を行うことになりますが、結果的に患者や家族の満足を得られる状態まで回復する例は少なく、結果的に何度も何度も手術を繰り返しているといわざるを得ない状況です。この状態をマルチプルオペレーションバックと言うのです。

一点の光明になるか

その為に、多数回におよぶ大手術を受けたが車椅子生活を余儀なくされたり、手術が必要な状態であるにもかかわらず、高齢であったり、手術不能な合併症のため手術が受けられず、痛み止めの内服やブロック注射も効かない。日々の痛みという正しく地獄のような生活を強いられている方は、意外に多いものです。その状況から救い出す一筋の光明のような治療法がSCS(脊髄電気刺激療法)です。

決断するのはあなたです。

脊髄硬膜外麻酔という神経ブロックの手技を応用し、通常は局所麻酔薬を注入しますが、SCSは細い電極コードを挿入し微弱電気を流し、脊髄の痛み信号をストップし、痛みのない日常生活を取り戻して頂くというものです。理論や手技は複雑なため、詳細はここでは申し上げませんが、患者様は腰の痛み止め注射を受けているだけという程度のストレスだけです。 どこに行っても見放され、治るのはもう無理!と諦めてしまった貴方の目に、これが届くと嬉しいです。

医療法人深緑会 田邊整形外科医院 理事長 田邊隆敏

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BKP/PVPの差ってなに?

2019,03,03 沖縄のカヌチャベイリゾートゴルフ場に友人達と行って来ました。

気温28度、友人のゴルフ肘も私の肩こりもすっかり良くなり、気候や保温の大切さを痛感しました。ひどかったのはゴルフのスコアだけでした。

以前は安静による保存的治療が中心だった

圧倒的な超高齢者社会が嵐のように接近して来てます。一般の方よりも整形外科開業医は、それを如実に感じ取ることができます。

例えば、脊椎の圧迫骨折で来院される患者数も、昨今急激に増加しているからです。

背椎の圧迫骨折は昔から高齢者を苦しめ、寝たきり状態に陥る主な原因とされて来ました。 しかしながら、治療法は2−3ヶ月間の寝たきりの入院治療から、ただ自宅療養に変わっただけで、最近まで、大きな変化はありませんでした。

先ずはPVP

そこへ颯爽と現れたのが、PVP(経皮的椎体形成術)です。レントゲン透視下において、潰れている椎体内に骨セメントを注入し、瞬時に固定化するため、先ず、痛みが大幅に軽くなり、その後の椎体の潰れの進行も抑える画期的な方法であり、受傷した患者の日常生活動作の改善の程度は飛躍的にアップしました。

しかし、粉砕が強い場合や血流が豊富な場合、注入した骨セメントが分散し、注入に苦労する場合も認められました。

次にBKP

そこで、骨セメントを直接椎体に注入する前にバルーンを挿入し、椎体内にスペースを作り、そこへ骨セメントを注入する方法がBKPです。椎体の外や、血管内や脊柱管内への骨セメントの分散や誤注入がなくなり安全性は向上しています。

筆者はというと

主にBKPよりもPVPを好んで行っています。その理由は、注入開始時間、注入速度、注入量を管理すれば誤注入は防止できますし、バルーンで作った球状のセメント玉よりも、椎体全体に染み込むように侵入した骨セメントは、隣接する椎体にも悪影響を与えにくいからです。術後の満足度もBKPよりもPVPの方が優れています。しかしながら、最終的には術前のX線、3D-CT、MRIで決定しています。詳しいことはお会いした際に御説明しますが、当院に通院中の患者が圧迫骨折を発症した場合は、多くの方がこの手術を受けられ、直ちに痛みから解放されて、いち早く社会復帰しておられます。 

実際の手術件数をここでは申し上げませんが、その経験年数、実績は飛び抜けて豊富ですので、圧迫骨折後の後遺症の痛みで悩まれ、当院を受診された際には、待合室で、ねえ奥さん、あなたはどうだった?と関西のノリで気軽に尋ねてみてください。

医療法人深緑会 理事長 田邊隆敏

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